カメラ店のフィルター売り場に行くと、ND8、ND1000、ND64、「6段」「10段」など、一見しただけではほとんど意味がわからない数字が付いたNDフィルターに出会います。選び方を間違えると、フィルターなしとほとんど変わらない写真になってしまうか、逆に露光時間が長すぎて現実的に撮影できなくなってしまいます。ここでは実際にどう選べばよいかを解説します。
NDフィルターの役割
ND(減光)フィルターは、いわばレンズ用のサングラスです。色を変えずにカメラに入る光の量だけを減らす、色付きのガラスまたは樹脂製の板です。センサーに届く光が少なくなると、同じ明るさで正しく露出させるために、より遅いシャッタースピード(あるいはより広い絞り、より高いISO)が必要になります。これこそがNDフィルターの本質です。真昼のような明るい状況でも、本来なら不可能なほど遅いシャッタースピードを使えるようになります。
段数で表されるフィルターの強さ
NDフィルターは、どれだけの光を遮るかを段数で表します。1段ごとにセンサーに届く光の量が半分になり、同じ露出を得るために必要なシャッタースピードは2倍になります。強さの表記には2種類ありますが、指しているものは同じです。
- 段数表記:3段、6段、10段、15段、20段
- フィルター係数/ND番号:ND8(3段)、ND64(6段)、ND1000(10段)、ND32000(15段)、ND1000000(20段)
これらの数字をまとめた表が手元にない場合は、当サイトのNDフィルター計算機が代わりに変換してくれます。フィルターなしのシャッタースピードと段数を入力すれば、新しいシャッタースピードを即座に算出します。
撮影シーンに合わせた強さの選び方
3段〜6段(ND8〜ND64):曇天時やゴールデンアワー、あるいは適度なスローシャッター効果を狙いたいときに便利です。荒れた水面を滑らかにしたり、雲にわずかな動きを加えたり、明るい光の中で露出オーバーにならずに絞りを開けて撮影したりできます。露光時間はおおむね1〜15秒の範囲になります。
10段(ND1000):最も一般的な「本格的な」長時間露光用フィルターです。日中に1/125秒だった露光を約8秒に延ばし、動く水を絹のように滑らかにしたり、雲に流れる筋を作ったり、人や車が行き交う賑やかなシーンを消し去ったりするのに十分です。多くの写真家が最初に手にする強さです。
15段〜20段:最もドラマチックな効果を狙うためのフィルターです。日中でも数分に及ぶ露光で荒れた海をガラスのように滑らかにしたり、1時間分の雲の動きを目に見える筋に圧縮したりします。特定の表現のための専門的なフィルターであり、日常的に使う道具ではありません。
実践上のいくつかの注意点
フィルターの重ね掛けは理想的ではありません。 2枚のNDフィルターを組み合わせてより高い段数を作ることは可能ですが、ケラレ(四隅が暗くなる現象)や色かぶりのリスクが高まります。特に広角レンズでは顕著です。必要な強さのフィルターを1枚だけ使うほうが、ほとんどの場合より良い選択です。
バリアブルNDフィルターは利便性と引き換えに画質を犠牲にします。 バリアブルNDフィルターは1枚でおよそ2段から8段まで自由に調整できるため、動画撮影や複数のフィルターを持ち歩きたくない写真家にとって便利です。ただし広角レンズでは可変範囲の両端で目に見える暗い「X」模様が現れ、固定強度のフィルターと比べて画質がわずかに甘くなるという欠点があります。
強いフィルターを装着するとファインダーが暗くなります。 10段以上のフィルターを装着すると、光学ファインダーではほとんど何も見えなかったり、ミラーレスの画面での構図確認が難しくなったりすることが多くあります。標準的な作業手順は、まず構図とピントを合わせ、その後フィルターを装着し、マニュアルフォーカスに切り替えて(暗い状態でカメラがピントを探し続けないように)、撮影前に計算機で新しいシャッタースピードを求めることです。
まとめ
選んだ絞りとISOでフィルターなしのシャッタースピード(フィルターを装着していない状態での測定値)がわかれば、それをフィルターの段数とともにND計算機に入力することで、正確な新しいシャッタースピードが得られます。あとはカメラをバルブモード(30秒を超える露光の場合)またはマニュアルモードに設定し、手ブレを防ぐためにリモートレリーズやカメラ内蔵のタイマーを使い、シャッターに残りの仕事を任せるだけです。