メニューでAF-S、AF-C、MFのどれかを選ぶことは、単に「自動か手動か」という話ではありません。AF-SとAF-Cはどちらもオートフォーカスですが、シャッターを半押ししている間にカメラがピントを再計算し続けるかどうかがまったく異なり、この一点の違いによって、静止したシーンでは最高の精度を出していたモードが、被写体が動き出した途端にピントがずれ続ける原因になることがあります。3つのモードの動作原理を理解すれば、どの状況でどのモードが不利になるかがはっきりします。
AF-S(シングルAF):ピントを固定してから構図を作る
AF-Sはシャッターを半押しした瞬間に一度だけピントを合わせ、ボタンを押し続けている限りその状態を保持します。その間に被写体が動いても、撮影者がカメラを動かしても、ピントは再計算されません。この方式の利点は、フォーカスロック後に構図を変える「フォーカス&リコンポーズ」が自由にできることです。中央のフォーカスポイントで目にピントを合わせ、半押しを保ったままフレーミングをやり直して、狙った構図でシャッターを切れます。ただしこの方式は、ピントを合わせた後にカメラと被写体の距離がわずかでも変わると問題になります。たとえばf/1.4まで絞りを開けて顔にピントを合わせた後、体をわずかに前に傾けながら構図を変えると、極端に浅い被写界深度のせいで目がピント面から完全に外れてしまうことがよくあります。人物撮影でもf/2.8より絞って静止した被写体を撮る場合はこの誤差が気にならないこともありますが、浅い被写界深度のポートレートでは、フォーカス&リコンポーズよりもフォーカスポイント自体を目の位置に直接動かす方が安全です。
AF-C(コンティニュアスAF):シャッターを押している間ずっと追従する
AF-Cはシャッターを半押ししている間、ピントを絶えず再計算し続けます。野生動物やスポーツのように被写体との距離が刻々と変わる状況で不可欠な理由がここにあります。シャッターを押した瞬間の距離ではなく、実際にシャッターが開く瞬間の距離に合わせてピントが更新されるからです。ただしAF-Cを使う際は、フォーカスポイントが被写体を常に捉え続けている必要があります。鳥がフレームを横切る途中でフォーカスポイントが背景の空に外れると、カメラは瞬間的に無限遠や背景にピントを合わせ直してしまい、被写体が再びフォーカスポイント内に戻ってきても、その間のタイムラグのせいで決定的な数コマがわずかにボケてしまうことがよくあります。最新のミラーレスカメラの被写体認識(瞳検出、動物検出など)はこの問題をかなり軽減しますが、認識が効かない角度や照明条件では、フォーカスポイントを手動でしっかり追従させることが依然として重要です。AF-Cを連写と組み合わせ、シャッターボタンではなく背面ボタン(AF-ON)にピント駆動を分離しておくと、静止した瞬間を狙いたいときは親指を離すだけでAF-Sのようにピントをロックできるため、モードを切り替えることなく一つの設定でほとんどの状況に対応できます。
MF(マニュアルフォーカス):オートフォーカスが判断を放棄する場面で
マニュアルフォーカスが必要になる状況は意外とはっきりしています。ガラス越しの被写体を撮る際、オートフォーカスはガラス表面の反射や汚れにピントを合わせようとすることが多く、霧や目の細かい網の向こう側の被写体、低コントラストな壁や空のようにはっきりした輪郭がない面、そして星のような暗い点光源を狙う天体写真では、オートフォーカスが前後に迷い続けた末に失敗することがよくあります。こうした状況では、ライブビューの拡大機能(フォーカスピーキングが使えれば併用)でフォーカスリングを自分の手で回す方が、はるかに速く確実です。マクロ撮影でもマニュアルフォーカスが有利です。被写界深度が数ミリ単位まで浅くなる倍率では、オートフォーカスが合焦している最中のわずかなカメラや被写体の揺れだけでピント面全体がずれてしまうため、三脚に固定してマニュアルで精密に合わせ、レリーズケーブルやタイマーでシャッターを切る方が安定します。
よくある失敗:モードを切り替えずに一つで押し通す
最も多い失敗は、一つのフォーカスモードをあらゆる状況にそのまま使い続けることです。静止したポートレートにAF-Cを使うと、シャッターを切る瞬間のわずかな手ブレでもピントが再計算されてしまい、AF-Sなら完璧だったはずのコマがわずかにずれてしまうことがあります。逆に、子どもやペットのように予測できない動きをする被写体にAF-Sを使うと、シャッターを半押しした瞬間と実際にシャッターが開く瞬間の間に被写体が動いてしまい、ピントがわずかに手前や奥にずれた写真が続くことになります。撮影前に被写体が静止しているのか、動き続けるのか、それとも状況によって変わるのかをまず判断し、それに応じてモードを決める習慣をつけると、こうした失敗をかなり減らせます。
実践チェックリスト
- 人物・風景・静物のような静止した被写体にはAF-Sを使い、浅い被写界深度ではフォーカス&リコンポーズではなくフォーカスポイントを直接動かしましょう。
- スポーツ、野生動物、動き回る子どもには、AF-Cを連写と組み合わせ、可能であれば背面ボタンフォーカスも併用しましょう。
- ガラス越し、低コントラスト、星明かりのようにオートフォーカスが迷う状況では、ライブビュー拡大とともにMFに切り替えましょう。
- マクロ撮影は三脚に固定してMFで精密に合わせ、レリーズケーブルやタイマーでブレを抑えましょう。
- 写真が予想以上にボケていたら、まずEXIFのフォーカスモードとフォーカスポイントの情報を確認し、原因がモード選択にあったのか他の要因だったのかを切り分けましょう。
