フルサイズ基準で勧められたレンズの焦点距離を、そのままAPS-C機に当てはめると全く違う結果になります。フルサイズで「ちょうどいい」標準画角とされる35mmレンズは、APS-C機では50〜56mm相当の画角に変わり、70mmは実質105〜112mmほどの狭さになります。誰かに勧められた焦点距離だけを見てレンズを買う前に、推測ではなく実際にクロップファクター計算機で数字を確認しておくのがおすすめです。標準ズームから離れるほど、「レンズに書かれた数字」と「実際にファインダーで見える画角」の差は広がっていきます。
レンズに書かれた焦点距離が実際の画角ではない理由
クロップファクターは、自分のセンサーサイズとフルサイズセンサーの比率にすぎません。ニコン・ソニー・富士フイルムのAPS-C機の多くは1.5倍、キヤノンのAPS-C機は1.6倍、マイクロフォーサーズは2倍が一般的な値です。レンズの実際の焦点距離はどのボディに装着しても変わらず、変わるのは自分のセンサーが投影された像のどれだけを切り取るかという点だけです。自分のカメラのクロップファクターと候補レンズの焦点距離を計算機に入力すれば、フルサイズ換算の画角がすぐにわかります。他の人の推奨と比較すべきなのは、レンズ鏡筒に書かれた数字ではなく、この換算値です。
日常使いのレンズはクロップボディでは違う焦点距離域が必要
友人が自分のフルサイズ機で「広角の集合写真からポートレートまで全部これ一本」と24-70mmレンズを勧めてくれたとしても、そのアドバイスはそのままAPS-C機には当てはまりません。1.5倍換算で24mmと70mmを計算機に入れてみると、同じ画角を得るには実際には16〜47mmほどのズームが必要だとわかります。クロップ機用の標準キットズームが24-70mmではなく18-55mmで売られているのはこのためで、1.5倍だと18-55mmはすでに約27〜82mm相当となり、フルサイズの「日常使い標準域」とほぼ同じ範囲に収まります。
クロップボディで定番のポートレート画角を再現する
85mm単焦点は、自然な圧縮効果と背景分離の良さから、フルサイズのポートレート用定番として勧められることが多いレンズです。1.5倍クロップボディなら85mmまで必要はなく、50〜56mmのレンズだけでほぼ同じ画角と圧縮効果が得られます。「クロップ専用」の明るい単焦点に50mmではなく35mmが多いのもこのためです。1.5倍ボディでの35mmはフルサイズの50mm台に近い、まさに「標準」画角であって、ポートレート向けの画角ではありません。
広角・風景用レンズは思っている以上に短い焦点距離が必要
フルサイズでは劇的な超広角として扱われる16mmレンズも、1.5倍クロップボディでは画角がおよそ24mm相当になり、もはや「超広角」と呼べるほどではなくなります。同じクロップボディで本当の16mm相当の画角を得るには10〜11mmに近いレンズが必要で、クロップ専用の超広角ズームが16mmではなく10mmや11mmから始まることが多いのはこのためです。フォローしている風景写真家がフルサイズ用の16mmレンズを勧めていたからといって、自分のクロップボディに同じ16mmを買っても同じ画になるとは限りません。
クロップ専用レンズ vs クロップボディに装着したフルサイズレンズ
キヤノンEF-S、ニコンDX、富士フイルムX、ソニーのクロップ用Eマウントなど、最初からクロップセンサー向けに設計されたレンズ群は、表記されている焦点距離にすでに換算計算が織り込まれており、対応するフルサイズレンズより小型・安価な傾向があります。フルサイズレンズをクロップボディに装着しても光学的には問題なく動作します(イメージサークルが自分のセンサーより広いだけです)が、使わないカバー範囲のために余計なサイズ・重さ・コストを背負うことになります。このトレードオフが意味を持つのは、将来フルサイズボディへのアップグレードを見据えて今からフルサイズ互換レンズを揃えておきたい場合くらいです。
よくある誤解:「標準50mm」がクロップでも同じように写るという思い込み
50mm f/1.8は、フルサイズでの評判の高さから最初の単焦点としてよく勧められます。自然で標準よりやや広め、幅広い被写体に使いやすい画角というのが理由です。しかし1.5倍クロップボディに同じレンズを装着すると、実際にはおよそ75mm相当の画角になり、想像より大きく狭くなります。集合写真や狭い室内には窮屈な画角ですが、逆にポートレートには好都合なこともあります。評判だけで「標準」単焦点を買う前に、自分のボディで実際どの画角になるのか計算機で確認しておきましょう。
実践チェックリスト
- 誰かのフルサイズ基準のおすすめ焦点距離だけでレンズを買う前に、自分のカメラのクロップファクターとそのレンズの焦点距離をクロップファクター計算機に入れて確認する。
- クロップボディで本当の超広角がほしいなら、16mmではなく10〜11mmに近いレンズを探す。
- 1.5倍クロップで85mmのポートレート画角を再現したいなら、50〜56mmのレンズを見る。
- EF-S、DX、Xマウント、クロップ用Eマウントなどのクロップ専用レンズはすでに換算計算が織り込まれている。フルサイズレンズも光学的には使えるが、将来のボディアップグレード予定がないなら不必要に大きく高価になりがち。
- 「50mm」や「35mm」がセンサーサイズに関係なく常に同じ画角になると思い込まず、買う前に換算画角を確認する。
