星が点として写る最大シャッタースピードを求めるとき、よく「500を焦点距離で割る」という500ルールが使われます。計算が簡単なので今も広く使われていますが、このルールは1990年代から2000年代前半の低解像度センサーを基準に作られた経験則であり、今の4500万〜6100万画素クラスのボディにそのまま当てはめると、実際よりもかなり甘い数値が出てしまいます。
500ルールが見落とす変数:ピクセルピッチ
500ルールは焦点距離(とクロップファクター)しか入力値に使いません。しかし星の流れが「見えるかどうか」は、センサー上でその流れが何ピクセル分にわたるかによって決まり、それは個々のピクセルの物理的な大きさ、つまりピクセルピッチに左右されます。同じ24mmレンズ、同じ露出時間でも、ピクセルが密集した高画素センサーではその流れがより多くのピクセルにまたがるため、等倍で見たときにずっとはっきり見えてしまいます。500ルールはこの違いをまったく反映しません。
NPFルール:絞り値とピクセルピッチを両方反映する式
フランスの天体写真家Frédéric Michaudが提案し、PhotoPillsが広めたNPFルールは、絞り値(N)とピクセルピッチ(p、マイクロメートル単位)を両方考慮し、実際の焦点距離(f、クロップ換算ではなくレンズ自体の焦点距離)を基準に最大露出時間を(35 × N + 30 × p) ÷ f で計算します。絞りを絞るほど、そしてセンサーの画素が密集するほど(ピクセルピッチが小さくなるほど)、計算される最大露出時間は短くなります。
同じレンズ、違うボディ:数値で見る差
フルサイズの24mmレンズをf/2.8で使うとすると、500ルールはボディに関係なく500 ÷ 24 ≈ 20.8秒という一つの答えしか出しません。しかし実際に星空計算機に各ボディのピクセルピッチを入力してNPFルールで計算すると、結果は大きく変わります。約2420万画素(ピクセルピッチ約6.0µm)のボディでは約11.5秒、約6100万画素(ピクセルピッチ約3.76µm)の高画素ボディでは約8.8秒になります。同じレンズ、同じ絞りなのに20.8秒と8.8秒では2倍以上の差があり、500ルールの数値をそのまま信じて20秒以上露出すると、高画素ボディでは星が明らかに流れた写真になってしまいます。
計算機に実際に入力する値
ExifLensの星空計算機(/tools/astrophotography-calculator)は、センサーフォーマット(フルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズなど)と画素数プリセットを選ぶだけでピクセルピッチを自動的に計算してくれるため、マイクロメートル単位のスペックを自分で調べる必要はありません。あとは実際のレンズの焦点距離と使用する絞り値を入力すれば、500ルールとNPFルールの結果を並べて表示してくれるので、現場でどちらの数値を信じればよいかすぐに確認できます。
よくある失敗:古いボディの数値を新しいボディにそのまま使う
高画素ボディに買い替えたあとも、以前覚えた「20秒」のような数値をそのまま使ってしまうケースがよくあります。低解像度ボディでは目立たなかった流れが、高画素センサーでは、特に大きく印刷したりSNS用に等倍でクロップしたりすると、はっきり現れてしまいます。ボディを変えたら露出時間も必ず計算し直しましょう。
実践チェックリスト
- 500ルールは焦点距離しか見ませんが、NPFルールは絞りとピクセルピッチも見ます — 両者の答えが違うのは正常です。
- ピクセルピッチはセンサーサイズと画素数で決まるため、画素数が高いほど安全な最大露出時間は短くなります。
- 計算機ではセンサーフォーマットと画素数プリセットを選ぶだけでピクセルピッチが自動で出るので、自分でスペックを調べる必要はありません。
- ボディを買い替えたり、クロップ倍率の違うレンズに変えたりしたら、以前覚えた数値は使わず計算し直してください。
- 大きく印刷したり等倍で見たりする予定なら、500ルールよりNPFルールの数値を基準にしましょう。
