ExifLensで扱う記事の大半は、ストップや距離、画角といった数字の話です。今回は少し違います。自分で撮影した6枚の写真(それぞれに「Chronicle of Moments_SH」のウォーターマークが入っています)を取り上げ、カメラを構えるきっかけになった発想は何だったのか、その発想を1枚の写真にした技法は何だったのかを、1枚ずつ見ていきます。先にお断りしておきます。これらのファイルには元の撮影情報が残っていないため、絞り値やシャッタースピードを記録を見ているかのように正確に書くことはしません。代わりに、各写真から学べる点と、計算機で自分で確かめられる出発点を紹介します。
1. 日の出の海:水の動きを遅くして静けさをつくる

この写真の発想は、2種類の時間の対比です。岩は変わらず、水は絶えず動いています。長秒露光で波を低い霧のようにぼかすと、黒い岩は穏やかな水面に浮かぶ島のように見え、視線は水平線上の細い赤い太陽へと自然に流れていきます。
これを実現するのは、ほとんど計算です。フィルターなしで1/15秒と測光される場面なら、6段のNDフィルターは露出を64倍にするので、1/15秒は約4.3秒になり、動く水を滑らかにするのに通常は十分な時間です。露出ストップ計算機でも同じ計算ができます。段数を足し、1段ごとに時間を2倍にするだけです。日の出は太陽周辺の空が、まだ暗い手前よりずっと明るいので、ブラケティング計算機で計画して合成するか、暗い手前をあえてシルエットとして受け入れる方法があります。
2. 逆光のカエデ:サンスターには小さな絞りが必要

赤いカエデの葉は光を透かすので、太陽が背後にあると明るく輝きます。葉の間から一部だけ見える太陽は、1つの点光源になります。レンズをf/11からf/16前後の小さな絞りまで絞ると、絞り羽根の形がその点光源を星形の光条に変えてくれます。右側のぼんやりした歩行者は遅いシャッタースピードの副産物ですが、主役にならずに写真へ動きを加えてくれた、うれしい偶然でした。
代償は回折です。非常に小さな絞りでは細部の描写が甘くなります。高度な被写界深度・回折計算機を使えば、自分のセンサーでどの絞りから影響が出始めるかが分かるので、きれいな星形が得られる範囲で最も開けた絞りを選べます。太陽を葉や枝で一部隠すのもコツです。太陽がほんの少ししか見えないほうが、光条はすっきりします。
3. モノクロの観覧車:色より幾何学

観覧車は、日常の中で放射状の線だけでできている珍しい構造物です。カラーでは鮮やかな塗装や雑多な背景が競い合いますが、モノクロでは構造だけが残ります。思い切ってトリミングし、車輪を左端からはみ出させ、右半分は何もない灰色の空にしました。この余白のおかげで、ゴンドラが小さな繰り返しの形として読み取れます。
こうした写真はRAWで撮っておくと、後でモノクロに変換するときに空のトーンをどの灰色に割り当てるかを調整できます。変換前に空を少しアンダーにしておくと、暗い鉄骨と淡い背景のコントラストが深まります。
4. 静かな湖のスカイライン:水面が落ち着くのを待つ

都市のスカイラインは、昼の光では平板に見えがちです。この写真を引き上げているのは水面です。手前の穏やかなさざ波が空の青を映し、カーブした岸に沿って視線をビルへと導きます。遠くの岸辺をかすめる暖かい光と、色づき始めた木々が、冷たいガラスに対する2つ目の色調になります。
広角での立ち位置が重要です。水面に近い低い位置に立つと、手前が大きくなりビルは遠ざかります。現地に行く前にカメラ画角計算機でレンズごとの画角を確認し、水面の反射を調整するには偏光フィルターも検討してみてください。
5. 秋の水辺:色温度もデザインの道具

ここでの発想は色の対比です。片側には暖かい紅葉、反対側には冷たいガラスと空があります。水路はフレームの外へ曲がっていくリーディングラインになり、反射が下半分の色を倍にしてくれます。
実践的な教訓は露出です。上は明るい空、下は日陰の水面なので、現場を離れる前にヒストグラムを確認しましょう。見方に自信がなければ、ヒストグラムの読み方のガイドが参考になります。空が白飛びしない範囲でやや明るめに撮り、暗部は編集で持ち上げるのが安全です。
6. 彫刻の中の太陽:運より計画

6枚の中で最も計画が必要だった写真です。太陽が彫刻の開口部にぴったり収まる時間は短く、立てる場所も地面の1点だけです。左右に数歩動くだけで位置関係は崩れます。ゴールデンアワー計算機で日の出・日の入りの時刻と太陽の方向を調べておけば、昼間に下見をして、いつどこに立てばよいかが分かります。
太陽がフレーム内で最も明るく、他はシルエットになるため、構造物ではなく空に合わせて測光します。長い望遠は彫刻との距離を圧縮し、アーチに対して太陽を大きく見せます。焦点距離選びには画角計算機が役立ちます。位置関係が合うのはほんの数分なので、早めに到着してください。
6枚に共通していたこと
1つ目は、どれも被写体ではなく理由から始まったことです。ゆっくり流れる水、光る葉、放射状の線、静かな反射、暖色と寒色の対比、太陽と物体の位置合わせといった理由です。2つ目は、ほぼすべての写真に、ツールで事前に計画できる要素があったことです。適切なNDの強さ、きれいに写る最も小さな絞り、画角、日没の時刻などです。3つ目は、公開しなかった物足りない写真には、たいていその理由がなかったことです。
次の撮影で試せる短いチェックリスト
- シャッターを切る前に、狙いを一文で書き出す。
- ゴールデンアワー計算機で日の出・日の入りの時刻と方向を確認する。
- ND計算は水辺ではなく、家でストップ単位で済ませておく。
- 選べる最小の絞りではなく、自分のカメラで十分シャープに写る最小の絞りを選ぶ。
- 明暗差の大きい明るい場面ではヒストグラムを見る。
- 正確な撮影場所を公開で共有する前に、EXIF削除ツールで位置情報を消す。
よくある質問
こうした写真に高価な機材は必要ですか? いいえ。しっかりした三脚とNDフィルター1枚で海の写真は撮れますし、残りの写真は機材よりもタイミングと立ち位置に大きく左右されます。
なぜ写真ごとに正確な設定値を書かないのですか? 印象的な記事より、正確な記事のほうがよいからです。元の撮影情報を確認できないため、根拠のある出発点を示し、ご自身のカメラで試していただく形にしました。
6枚のうち、最初に真似するならどれがよいですか? 逆光のカエデをおすすめします。小さな絞りと低い太陽があればよく、光の向きがすべてを変えることを最も早く学べます。
